背景
制御システムでは、将来の基準信号や需要予測に基づいて制御入力を計算するモデル予測制御が広く用いられる。しかし、予測値に誤差があると制御性能が大きく劣化する。予測ガバナ(Prediction Governor)は、過去の信頼できる情報を用いて予測信号を整形し、予測誤差の影響を低減する手法である。この概念は電力需給制御や自動車の自動運転など、不確実な予測情報を利用する制御問題で重要となっている。
目的
- 予測信号の不確かさに対するロバストな整形手法を開発し、誤差による性能劣化を最小限に抑えること。
- 電力システムや車両制御などの実問題に適用し、有効性を実証すること。
アプローチ
- 最適予測ガバナ:過去の予測値とシステムダイナミクスに基づいて未来の予測信号を整形する機構を提案し、性能限界を解析した。さらに、最適化により予測ガバナのパラメータを求める解析的解を導出した。
- 需要データ改変:電力需給制御では、需要予測値を直接制御に用いるのではなく、予測値に対するフィードバック補正を適用し、発電計画の誤差を低減した。
- 横風外乱補償:車両の安全性を低下させる横風外乱に対し、外乱オブザーバで推定した外乱を V2I(vehicle‑to‑infrastructure)通信で共有し、予測ガバナで外乱予測を整形して補償する方法を提案した。
- データ駆動型予測ガバナ:2026年以降は、プラントモデルを用いずに入力–出力データから予測ガバナを設計するアルゴリズムを検討している(国際会議 2026/1)。
主な成果
- 最適予測ガバナの理論を確立し、入力飽和を伴うリニアシステムの例で性能向上を検証した。電力需要データの整形に適用し、供給側の負荷変動を減少させることが示された。
- 横風外乱補償では、V2I通信と予測ガバナを組み合わせることで従来の外乱オブザーバのみの場合よりも操舵角変動が小さくなり、車両の安定性が向上した。国際会議でも発表し、実車実験に向けたシミュレーション結果を報告した。
- データ駆動型予測ガバナは、制御対象のモデル化が困難な場合でも予測値整形が可能なアルゴリズムとして提案され、2026年の国際会議で発表された。
関連業績(代表例)
| 年 | 業績タイトル | 備考 |
|---|---|---|
| 2025 | Crosswind Disturbance Compensation by Integrating Disturbance Estimation and Vehicle‑to‑Infrastructure Communication | 横風外乱を予測ガバナで整形して補償。 |
| 2024–2026 | Prediction governors: optimal solutions and application to electric power balancing control | 最適予測ガバナの理論と電力需給制御への適用。 |
| 2024 | Filtering function to mitigate the impact of cyber‑attacks in cooperative adaptive cruise control | 予測信号への攻撃をフィルタで緩和する研究。 |
| 2026 | Data‑driven design algorithm of prediction governors (国際会議) | データ駆動型予測ガバナ設計の提案。 |
| その他 | 需要データ改変、半調波制御など過去の論文多数 | 予測ガバナの基礎研究として。 |